かぞえ / 六
げんぷく
元服
十五歳
髪を結い、幼名を捨てて名を改める。一曲目でもらった名前を、ここで手放す。
この曲は、まだ鳴っていません。
詞
元服
何日も同じ頁を開いていた
読んでいないのに端だけ柔らかい
机の端に積まれた背表紙は
一冊も薄くならない
階段が一段ずつ鳴って
数えているうちに近づく
開いた頁に指を置いて
何も読まずに待っている
扉は開かないまま
足音が遠くなる
それでもしばらく
机を離れられない
呼ばれてもいないのに
返事の形で座っている
まだ誰にもなっていない僕を
誰かがもう名づけている
——この先は、まだ
覚書
一曲目でもらった名前を、ここで捨てる。捨てたことを本人が覚えていないのが、この儀式のいちばん静かなところだと思う。
音信
他の歳へ