1st ALBUM / 2026
かぞえ
全十二曲
人は生涯のあいだに、何度も呼び名を変えられる。生後七日の夜に名前をもらい、三歳で髪を伸ばしはじめ、六十一で暦がひとまわりして戻ってくる。十二曲は、そのつど与えられた年齢の呼び名だけでできている。はじめは祝われ、途中で一度だけ恐れられ、また祝われて終わる。
TAP — それぞれの歳へ
字解
数は、字のなかに隠れている
年齢の呼び名の多くは、字を合わせたり、崩したり、引いたりすると数が出てくるという遊びでできている。千年前からある仕掛けを、そのまま曲名にした。
二十歳
はたち
二と十を合わせて
「廿」の一字になる
TAP — とめる
喜寿
七十七歳
崩し字の「㐂」は七を
重ねた形をしている
TAP — とめる
白寿
九十九歳
百から一画を取ると白
ひとつ足りない歳
TAP — とめる
WORDS
詞
十二曲から、すこしずつ
御七夜
七日のあいだ 僕には名前がなかった
呼ばれないまま息をしていた
灯りの下できみたちが
知らない音をならべている
その音がいつか僕になる
まだ意味はわからないけれど
返事をするたび すこしずつ
僕はその音に似ていく
——この先は、まだ
二十歳
いちばん覚えてもらえる匂いを探して
いくつも手首に乗せた
最後に選んだのは
みんながいいと言ったものだった
ここまでで半分だと
どこかで読んだ
残りのほうが長いはずなのに
もう半分だと言われている
おめでとうと言われて
ありがとうと返す
何がめでたいのか
どちらも知らないまま
それでも今日は
知らない匂いをつけて出かける
——この先は、まだ
白寿
雨の音が遠くなった
耳のせいだと笑われる
それでもまだ聞こえるものがある
きみが名前を呼んだときの間
百から一を引くと白になる
足りないぶんだけ色が抜けるらしい
抜けたぶんだけ軽くなって
今日はずいぶんよく晴れている
七日かけてもらった名前を
そろそろ返しにいこうと思う
——この先は、まだ
ABOUT
音信
おとずれ
音を持たない音楽をつくっています。
2026年、詞と装丁だけでできたアルバム『かぞえ』を発表。収録された十二曲は、まだ一度も鳴らされていません。
名前は「訪れ」とも「音信不通」とも読めます。届くことと、届かないこと。どちらも同じ字で書けるのが不思議で、そのまま名前にしました。
音が鳴る日まで、言葉のほうを先に置いておきます。
音は、まだ誰のものでもありません。
いまのところ、ここ以外にはいません。
NEWS
音信
おんしん